3月のWBCに出場する侍ジャパン28人が発表された。山本浩二監督(66)ら首脳陣が20日、宮崎合宿の紅白戦終了後に代表候補33人から絞り込みを行い、メンバーを外れる5人を決定した。難航したのは野手の人選。山本監督は当落線上にいた複数の選手の中から、昨季のセ、パ盗塁王の大島と聖沢を外す大きな決断を下し、打撃力重視で角中勝也外野手(25)を残した。

 発表の場は物々しい雰囲気に包まれた。テレビカメラ13台に報道陣100人。会見場に表れた山本監督は、無数のフラッシュに驚いた表情を浮かべた後で、28人の名前を読み上げた。「みんなすごく意欲的に練習していたが、戦略的な面からも選ばざるをえない。毎日のようにミーティングを重ねて、いろいろなことを想定しながら、今日まで悩みました」。最後の最後まで悩み抜いた。

 投手は大方の予想通り、右肩痛の浅尾と、滑るボールの対応に苦しんだ山井が外れた。一方、大激戦の野手の人選については、コーチ陣の意見も割れ、最後は山本監督が決断した。メンバーから漏れたのは、右手中指の爪を負傷した村田のほか、大島と聖沢の「盗塁王コンビ」だった。

 過去2大会の象徴だった日本らしいスモールベースボールを展開するには、足を使った攻撃が欠かせない。しかし、今回の侍ジャパンには糸井や松田、長野らレギュラーの中に俊足の選手が多い。山本監督は「足を持っている選手はレギュラーにいる」と説明。ベンチで待機する代走のスペシャリストは本多1人で足りるとの判断が背景にあった。

 代走より、勝負どころでの代打の切り札を選んだ。スモールベースボールを体現できる俊足選手の代わりに、角中が28人の中に残った。守備やスピードに物足りない面はあるものの、簡単に三振しない粘り強い姿勢、何よりパの首位打者に輝いた打力を評価した。山本監督は「点を取ることも考えないといけない。(角中は)代打だけじゃなくスタメンも可能性があるということ」と期待した。

 山本監督にとっては、宮崎合宿に参加した33人全員が侍ジャパン。落選した選手には直接伝え、握手を交わした。「彼らも侍ジャパンの一員という気持ちに変わりはない。何か事故でもあれば、手を貸してほしい。はせ参じてほしい」。つらく、大きな仕事が1つ終わった。今日21日に宮崎合宿が終了する。「3月2日(WBC開幕戦)にピークに持っていけるよう、コンディショニングをしっかりして、心を1つにして戦う」。外れた5人の思いも背負って、前へ進む。【広瀬雷太】